Propensity Score Methodsは、RCT並みに信頼性の高い結果が得られるのか?

夥しい数の臨床試験が行われているが、未だに、その信頼性に於いてRCT(無作為割付臨床試験)を超える方法はない。洗練された数学モデルを使用し、高速の計算機を使用しても、サイコロを振って2群に分け、実薬、偽薬を投与する方法に及ばない。

 

Propensity Scoreによる方法を耳にしたのは、もう、20年も前になる。当時、ちょっと調べてはみたものの、従来の多変量解析を超えるものではないと考え忘れ去ってしまっていた。しかし、最近になって、大きく取り上げられている様だ。曰く、「観察研究によるデータでも、RCT並みに信頼性の高い結果が得られる」、、、。

 

RCTは、サイコロを振り2群に分け、片方に実薬を、もう片方に偽薬を投与する。2群は、ある程度のサンプル・サイズがあれば、あらゆる因子に関して、その分布がほぼ等しくなる。つまり、交絡がないデータを得る事が出来る。直接的な証明ではないが、乱数の性質からして、2群があらゆる(とは言い過ぎかと思うが)因子に於いて分布が均衡している事を否定する事は難しい。測定する因子に限らず、「測定しない」因子に関してもそれは成立する。

 

Propensity Scoreによる方法が、RCT並みの信頼性を期待出来るのは、この「測定していない因子」に関しても、2群で分布が均衡している事が決定的に重要と考えている。測定している因子の不均衡であれば、それは、多変量解析で調整が可能である。しかし、多変量解析は、測定していない因子で調整する事は不可能である。

 

薬剤の臨床試験に於いては、医師の処方に任せると、バイアス(偏り)が生じてしまう。処方に対して、バイアスとは失礼な言い方であるが、統計学的には、バイアスであり、この偏りが、投薬と効果の関係を歪めてしまう。RCTは、この偏りがない。従って、投薬と効果の関係が歪められる事はなく、偶然誤差のみを評価すればよい。

 

Propensity Scoreによる方法は、この処方バイアスを減少(可能であれば除去)しようとするものである。観測された因子に関して、ロジスティック回帰分析を行い、実薬群と偽薬群とに割り付けられる確率を計算し、その確率がほぼ等しくなるように、マッチングや層別化を行う。確かにこうして得られたデータは、実薬群と偽薬群とで、様々な因子の分布は均衡したものになる(なるようにしている)。つまり、観測された因子に関しては、RCTとは、区別のつかないデータとなる。

 

では、観測されていない因子に関してはどうか?これが、Propensity Scoreによる方法がRCTをどこまで模倣出来るかの要になると考え文献検索を行った。幾つかの文献にあたったが、その中の1つPeter C. Austinによる

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22287812

 

の中にある146頁、「Eighth, we remind the reader that propensity score methods only allow one to account for measured baseline variables. Estimates using each of the estimates of treatment effect may be susceptible to bias due to unmeasured confounding variables.」とある。残念ながら、測定されていない因子に関しては、susceptibleであるらしい。

 

尤も、多変量解析では、測定された因子の不均衡のみを調整するのであるが、Propensity Scoreによる方法では、少なくとも、治療法を選択する確率により取捨選択を行うのであるから、多少は、多変量解析よりは、RCTに近づく可能性はある様に思われる。この辺りの事情は、測定している因子を2群に分け、1群でPropensity Scoreによってマッチングや層別化を行い、残りの因子を測定していない因子と見做して、この測定していない因子の不均衡の度合いをみれば、多少の目途は、得られるのではないかと考えるが、、、。しかし、いくらやっても、理論的なものではなく、この場合は、こうでしたとしか言えないので、学問的には、取るに足りないものである事は、言うまでもない。

 

 

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日本の歴代メダル獲得のグラフ。獲得数と金、銀、銅メダルの割合。

 

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GDPとメダル獲得数(リオデジャネイロオリンピック)

国別GDPの規模とメダル獲得数(金、銀、銅の合計)。

GDPが、世界のベスト10に這入る規模になると、オリンピックでのメダル獲得数が急激に伸びる。それ以下であれば、国のGDPの規模とメダル獲得数との間の関連は小さい。

 

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我々の知性は、なぜ、こうもオーバースペックなのか?(宇宙論を読んでの感想)

ある時点での状態が全て判るならば、その後の宇宙がどの様に振る舞うかを数学的に決定出来ると唱えたラプラス的決定論は、量子力学の登場によって粉砕されたと考えるのですが、ここでは、初期値と物理法則によって決定論的に記述出来るとの考えのようですね。

 

宇宙と生物とを絡ませたのが、面白い視点だと思う。生物は、ダーウィンの進化論に従う。自らダーウィン主義者だと公言するリチャード・ドーキンスは、歴代の偉大なる科学者を並べて、一方の末端に、フロイトやマルクスを、もう一方の末端にアインシュタインを置いた。ここで、宇宙人が地球を訪問したとして、かつ、意思の疎通が可能な場合、まず間違いなくその宇宙人は、彼らのアインシュタインを持っているだろうとドーキンスは、言っている。何故なら、アインシュタインの相対性理論は、宇宙のどこでも普遍的に成立するからだ。

 

同時に、その宇宙人は、フロイトやマルクスは持たないだろうと云う。何故なら、フロイトやマルクスの理論は、宇宙に於いて普遍的な理論ではないからだ。では、ドーキンスは、ダーウィンを何処に置くのか?ドーキンスは、アインシュタインにごく近い所に置いている。もし、生物が他の天体で出現したとするなら、進化論に従うのは、まず間違いないからだ。それほど、ダーウィンの進化論を普遍的な法則と位置付けている。

 

宇宙と生物の絡みで言えば、1つ不思議に思うのは、与えられた環境に適応する事が進化の本質であるとするなら、地球の環境、生物学的ニッチ(地位)を占めるに必要な知性に対して、ヒトの知性は、明らかにover-specではないかと云う事だ。地球の環境に適応して、繁殖するのに、なぜ、宇宙の開闢を解明する、あるいは、解明しようとする知性が必要なのか?元素を分類し、素粒子を発見し、それらを規定する法則を理解する必要があるとは、到底思えない。

 

http://www-utap.phys.s.u-tokyo.ac.jp/~suto/myresearch/mitaka-20151031.pdf

 

 

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